「花彩に買い物に付き合ってほしいと言われて、僕は妹分のお願いとあって、誘いに乗ってお台場に行った。
 偶然そこで、ひったくりの現場に出くわした。
 気がついたら僕は夢中でひったくりの犯人を追いかけていた。
 タックルで犯人を捕まえた。
 大事にならず、無事に被害者の荷物が戻って良かった…。」


翌朝、私とポンちゃんは、事務所の社長と、応接室のテレビをにらみ付けていた。

画面には日高優成のブログに書き込まれた文字がチカチカと映し出されている。

私はポンちゃんの肩をゆすった。

「私、優成さんのこと誘ってない!誘ったのは向こうだし、ひったくりを追いかけたのは私だよ?」

ポンちゃんはうなだれたまま、私に揺すられるままに、大きな体をぐにゃぐにゃさせた。

前日のマスコミ操作でポンちゃんは、事件のもみ消しを図ろうとした。

けれど、目撃者が多く、警察もかかわったために失敗に終わってしまった。

「まいったな、これじゃあむしろ日高優成のイメージアップの材料だ」

社長は頭を掻いた。

「社長、ポンちゃん、本当にごめんなさい!」

私は立ち上がって勢いよく頭を下げた。
悔しくて、唇をかんだ。

芸能界で信頼を寄せていた数少ない先輩から、裏切られた。

ゆるんだ顔に、不意に平手打ちを喰らった気分。


そのとき、応接室のドアが開いた。