「かーやに、頼みがある」


優成はそう言うと、封筒をひとつ差し出した。

宛名には、華さま とある。

「蒼からお願いされたんだ。
 この華って子、
 いつもファンレターをくれているから
 返事を書きたいけど、
 住所が分からないから、
 渡してほしいって」

「五十嵐さんが
 返事を書いたんですか?
 ファンレターなんて、
 返事が書けないほど
 たくさんもらってるはずなのに」

「応援してくれている気持ちを
 すごく感じるから、
 この子にはどうしても
 返事を書きたかったんだって。
 それで、かーやに渡してもらえると思って
 早速書いたらしいよ。
 俺が収録でかーやに会うって知って、
 俺が頼まれて持ってきたんだ」

私はその封筒を受け取った。

「あの…」


「それと、もうひとつお願い。
 今日、妹の誕生日プレゼント、
 選ぶの付き合ってくれないかな」

「それは、いいけど…」

「大丈夫だよ、
 ちゃんと安全にエスコートするから」

優成は私の頭をぽんぽんと叩いた。

それから私は携帯でポンちゃんに電話をかけ、これから買い物に言ってもいいかと聞いた。

優成が私の電話を奪い、ポンちゃんと他愛ない話をしたあと、私のことを買い物につき合わせるが、必ず責任を持って送り届ける、と言った。

ポンちゃんは機嫌よくオーケーしたらしかった。

電話を切ると、優成は続けた。

「それと、
 付き合ってほしいのは
 今回だけじゃない、
 俺と付き合ってほしい」

優成ははっきりと明るい声で言った。

私は口を開いたまま、優成が微笑んでいるのを見つめた。


「好きな人いるのか」

「いや…それは、その」


蒼への思いを打明けようと思っていたけど、これはタイミングがまずすぎる。

私はもごもごと口ごもってしまった。

「俺といると楽しいよ。おいで」

兄のように慕っていた先輩の突然の告白に驚きながら、はっきりと断ることが出来ないまま、優成の車でお台場に向かった。