楽屋のドアを開けたのは、蒼本人だった。

上半身裸で、首からタオルをさげている。

汗で濡れた髪がきれいだった。


私の姿を見て、あ…と言って少し頬を赤くした。

私も耳が熱くなって目を伏せた。

「優成さん、今日はありがとうございます」

弾むように蒼が言って、楽屋の中へ私達を促した。

「花彩ちゃんも、ありがとう。来てくれてたんだね」

「お前が招待したんだろ。しらじらしいよ蒼」

優成がいうと、蒼は

「え?あれ?あぁ、そうだ!そうだった」

と言って笑った。

私は顔を上げることができなくなった。


「かーやの親友からだって」

優成は私の手から花束を奪い取り、蒼に渡した。

まるで、優成は私を自分の所有物みたいにあつかっている。

なんにもできない妹をフォローするお兄さん気取りだ。

「ありがとう」

蒼はそう言って花束をのぞきこんだ。

「手紙入り。お、この封筒は」

私ははっとした。