「え、いいです、私、もう帰ります」


「せっかくだから、寄っていこうよ。
 感想言ってあげたら、きっと喜ぶよ。
 それに、その花」


私は自分の手元を見て慌てた。

ファンレターを忍ばせた花束を、ずっと握り締めていたのだ。

リボンの付いた持ち手は、手のひらの汗でぐちゃぐちゃ。


「あ、こ これは、
 親友にファンがいて、
 渡してくれって頼まれてたんだ」

「じゃ、行こうぜ」

優成は私の手をとって、迎に来た会場スタッフの後を歩き、楽屋に向かった。


心臓が張り裂けそうだった。


こんな形で蒼に会うことになるなんて。


神様のいじわる。