アイドルゆえの、恋愛禁止のカラダ。

周りを気にしないで堂々と恋することはできない。

蒼だって、大人気のアイドル。

恋愛は禁止されているにちがいない。

それなのに、誘ったりしたら、蒼に悪い。


それでも、蒼への気持ちは、自分の胸にしまいこんでおくには大きく育ちすぎていた。

思いを伝えないと、苦しくて苦しくて、発熱してしまいそうだった。

いつか思いを伝えられるときが来ると信じて、自分の素直な気持ちを、大切にしていこうと決めた。


それから私は、本名で蒼のファンクラブに入り、スケジュールの合間を縫って、こうしてお忍びでコンサートツアーに出向くようになった。



「あれ、かーやじゃん」

最前列に座って、コンサートのパンフレットに見とれていた私は、ハッと我に返った。

「い、いえ、人違いです・・・」

と答え、おずおずと声の主の顔を見上げた。

「なんだ、日高さんかぁ」

緊張が緩んだ。日高優成だった。

チェックのシャツにカーデガンという脱力した服装だけど、身につけているものはちょっと高級で、清潔感が溢れている。

優成は、どさっと隣に腰掛け、長い足を組んだ。

優成は蒼の事務所の先輩だ。

ミュージカルや映画もこなすくせに、いつも誰にもこびずに自由に振舞っている優成に、蒼は憧れを抱いているらしい。