とても清潔感のある白い空間に、15人ほどの様々な年齢の男女が体育座りをしていた。

ここは、知的障害者を対象とした生活介護事業所「ひだまり」の一室である。
彼らの注目を集めて、ならは立っていた。

「今日から皆さんと一緒にお仕事することになりました、かどの、なら、です。楽しく過ごしましょう。よろしくお願いします。」

なるべくハッキリと分かりやすく声を張ったつもりだ。

「かどのなら!」

ダウン症と思われる男の子が叫んだ以外は、とても反応は薄く静かだった。
事務局長の菅原さんが後を繋いだ。

「みなさん、みなさんの方がここでは先輩です。門野さんになんでもいいです、教えてあげてください。たくさん話しかけてください。とくに照れ屋さん達、頑張りなさいよ〜。増田くんは口を減らしましょう。はい、ということで、門野さん大丈夫かな?男の子たちは門野さんみたいな若い女性が大好きだからくれぐれも気をつけて〜ってアハハハ、セクハラかな?」

主任らしき女性が後ろの方から「セクハラです!どうするんですか、今日で辞めちゃったら!」と笑いながら対応した。

どうやら和気あいあいとした事業所のようだ。
面接でも感じたが、職員もアルバイトも利用者も穏やかな人間が多いように感じる。

ならは安堵を覚えながら、菅原さんに笑顔を向けた。