皮肉にも雷様の情報が入ってきたのは、それからすぐのテスト初日だった。

二限のテストに間に合うように教室に入ると、すでに来ていた里佳子がならを見つけて手を振ってきた。

「あの女、雷様とご飯食べてた女、同じバイト先の子とサークル一緒らしくて、話聞けたんだけど、高校の時からずっと付き合ってるらしい。3年くらい。それで、ヤマトくんだって。雷様の名前。」

ヤマトくん。
3年くらい。
付き合ってる。
ヤマトくん。
正常に働かない頭で、ならは「そっか。」と返す。

「ならちんには辛いかもしれないけど、他の人を探そう。もっともっといい人いるよ。絶対いる。そんなに雷様、イケメンってわけじゃなかったし。」

里佳子は一人でシャキシャキと喋ったが、ならの頭には全く入ってこなかった。
かろうじて目の前のテストに集中したものの、初めての大学のテストは手応えを感じることなく終わった。

静かに失恋とともに、長い長い夏休みに突入することとなった。
そして夏休みが明けた大学には、もう雷様の姿はなかった。