2人は国道沿いにあるファーストフード店へ入り、それぞれコーヒーとキャラメルラテを頼んでテーブルに着く。

「休みの日って何してんの?」

峯岸がコーヒーを一口飲んで尋ねる。

「買い物とか、卒論とか。」
「卒論!」
「そうだよー、夏休み中なのに大学行きまくってる。」
「わー、俺大学辞めて良かったー。」

峯岸が笑う。

「テーマ何?」
「えー、つまんないよ。」
「分からないかもしれないけど教えてよ。」
「えー・・・SNSに見るコンテンツマーケティング?」
「おー、なんかかっけえ。分からんけど。何それ。」
「ここで話すの?」
「話して話して。」

峯岸がならの卒論のテーマに興味を示す。
ならもここで話すことに抵抗を感じながらも、少しずつ説明を始める。

ならの説明を峯岸は「うん、うん」と頷きながら聞いていた。

「ファンを獲得するようなコンテンツ作りとはー・・・って、面白い?この話。」

ならは途中で一人で喋り続けてることに気まずさを感じ、話を中断しようとする。

「めっちゃ面白いよ。」

峯岸が笑顔で返す。

この笑顔はずるい。

「半ばならちゃん見てたけど。」

峯岸はハハッと笑った。

「俺は経済学部だったからちょっと方向違ったけど、もっと勉強しとけば良かったってすげー思う。」
「そう?」
「俺、4ヶ月くらいしか大学通ってないけど、たまにニュース流してると、『このこと教授言ってたなー』って頭に残んのよ。基本中の基本みたいな必修科目なんだけど。あーもっと世の中知れたかなって。」
「そっかー。」
「たぶん俺が企業のサイト見るのと、ならちゃんが見るのとで感じ方は全然違うよね。」
「そうかな?」
「絶対そうだって。しかも就職先が通販会社だからなー。」

峯岸がコーヒー飲みながら独り言のように呟く。

「ならちゃん、なんでその会社にしたの?」
「その会社がもともと好きだったから。」
「ふーん。」
「全部かわいいんだもん。」
「いやー、ならちゃん何でもかわいいって言うもんなー。」
「本当にそこのは可愛いの!」
「だって俺の作ったやつもかわいいって言ったし。」

ムキになるならを見て、峯岸が小さく呟く。
ならは青空マルシェを思い出した。

「峯岸さんが作ったのもすごくかわいかったよ。」
「ほら、なんでもかわいいって言うー。」

峯岸がならをからかう。

「本当にかわいかった!」
「はいはい。」
「ほんとに!ほんとに、峯岸さんが作るの、すっごいかわいいと思う!」

ならはさらにムキになる。

「ねえ、『峯岸さん』ってやめない?」

峯岸がニヤニヤして話を変えてきた。