猛を家に帰し、工房に今日作った作品たちを置くと、峯岸は「おまたせー」と車に戻ってきた。

「途中のどこか適当な店でいっか。」
「そうだね。」

まだ2人だけになるのは2度目なのに、最初ほどの緊張感はなくなっていた。

峯岸は常にリラックスしているので、ならもすっかり峯岸のペースになってしまうのだ。
それがとても居心地いいことに気付く。

ハンドルを操縦する峯岸の華奢ながらも筋が浮かぶ腕につい見とれてしまう。

夢みたいだな。

ならはしみじみそう思う。

ずっと憧れていた人の隣にいる。

「この間ごめんね。」

峯岸が突然謝ってきた。

「何が?」
「お母さんご飯作って待ってたでしょ。」
「ああ、でも連絡してたから。」
「お母さんに申し訳ないことしちゃったね。全然そこまで気が回らなかったわ。」
「大丈夫だよ。」
「ほんとに?うちの母ちゃん結構うるさいよ。」

一目惚れだったのに、今では峯岸の持つさりげない優しさがとても好きになっている。

「今日は急に誘ったからお茶だけで。」

峯岸が笑ってならの顔を見る。

なんて答えよう。

そう悩んでる間に峯岸が続けた。

「次うちで陶芸やる日はさ、この間みたいに一緒にご飯食べれたらなーって思ってるんだけど。」
「あ、うん。」
「お母さんに『ご飯食べてく』って言ってて。」
「うん、分かった。」
「よっしゃー、今ので楽しみが増えたぞ。」

ならは峯岸の気持ちが自分の方へ向いているんじゃないかと気付く。

私のこと好きなのかな。

好きだったらいい。

ならは峯岸の嬉しそうな横顔を見つめた。