「何食べよっか。」
「んー、ファミレスとかで良くない?」
「あ、そんなんでいいの?おっけー。」

2人は一番最初に見つけたファミレスに決めた。

平日の夜は空いている。
2人は禁煙席に通された。

「ならちゃんはもう就活終わったの?」
「うん、一応内定もらって。」
「どこどこ?」
「分からないと思うけど、イクイスース・カンパニーっていう通販会社。」
「通販会社かー。何すんの?」
「一応、商品企画の部門で内定もらってる。」
「かっこいー。」
「実際にバリバリ働いてたらかっこいいけどね、まだ内定もらったばっかりだし。」
「いやいや、すごいよ。おめでとう。って遅いかもしれないけど。」
「ありがとう。」

ならは素直に祝ってもらえて嬉しかった。

「じゃあ、なんで今のとこでバイトしてんの?ってめっちゃ面接みたいな聞き方になっちゃったけど。」

峯岸がならにたずねる。
ならは、自転車がパンクしてしまって困ってたおばさんのことを丁寧に話した。
峯岸は静かに最後まで聞いていた。
そして「ならちゃんは、そういうことができちゃうんだね。」と静かに言った。

「え?何が?」
「たぶん、障害者だから、とか、お年寄りだから、とかじゃなくて、普通の女子大生が困ってたとしても、ならちゃんなら声かけてあげてたんじゃないかな。」
「あー、まあ、そうかなー、何も考えてないけど。」

ならは首を傾げながら、カルピスソーダを飲む。
峯岸が続ける。

「そういうのが標準搭載されてる体っていうかさ、たぶん頭で考える前に体が動いてる感じ。」
「なにそれ。」
「なんていうかなー、分からないかなー。意気込む感じがないっていうか。」

そう言いながら、峯岸もコーラを飲む。

「『募金活動してまーす!』みたいなことはやらないけど、個人的に募金する、みたいな。んー、なんて言えばいいのかなー。」
「いいよ、もう。」
「なんとなく、できちゃうんだなーって思った。」
「よく分からないけど、ありがとう。」
「よく分からないんかーい。」

2人は笑って、一度話が終わる。