ならは緊張しながら、初めて降りた駅のロータリーに立っていた。

「迎えに行きます。」

電話口で峯岸はたしかにそう言った。
本当に来るのだろうか。

ならは青空マルシェで名刺をもらい、すぐにメールで連絡をしていた。
詳細を電話で打ち合わせし、最後に峯岸が「迎えに行きます」と言ったのだった。

おそらく不便な場所にあって、ならは車を持ってないからだろう。

そう自分に言い聞かせ、過度な期待をしないように自分を保っていた。

ロータリーに白いバンが入ってきた。
峯岸だ。

「門野さん、すみません、お待たせしました。」

峯岸がならを見つけると、目の前に車を止め、颯爽と車から降りてそう言った。

「いえ、全然。」

ならはドキドキしながらそう答える。

「はい、どうぞ。」

峯岸が助手席のドアを開けた。

隣だ。
ならは耳まで熱くなるのを感じた。

「一応バスもあるんですけど、門野さんの前後に予定がない時はこうして送迎できるんで。」

峯岸は運転しながらならに説明をする。

そうか、教室の受講者も私一人なんだ。

峯岸が説明を続ける。

「結構平日の午前中とか主婦のグループが多いんですけど、この夕方の時間帯は誰もいないんですよね。」
「そうなんですね。」

ならはそれしか言えない。

「あ、っていうか、同い年ですよね。タメ口で良くないですか?」

峯岸の急な提案だった。

「はい、全然。」
「あ、じゃあそれで。元同じ大学だし。はい、着きました。ね、車だとすぐでしょ。」