翌日、大学からひだまりに向かうと、門のところでインターホン越しに話してる男性の後ろ姿があった。

誰だろう、とその存在を気にしながら、ならはいつも通り門をくぐりかける。

あれ?
この横顔。

ならはその横顔に見覚えがあった。
何度も何度も目で追い続けた横顔。

思わず立ち止まりそうになる。

インターホンから「はい、どうぞー」という能天気な菅原さんの声がして、男性が門をくぐる。

ふいに男性と目が合った。

雷様だ。

髪型や服装はすっかり落ち着いていたが、一目で分かった。

雷様はならを見て、会釈する。
ならも無意識に会釈したが、頭が真っ白になる。

なんで。
なんでこんなところに雷様が?

雷様は颯爽とひだまりへと入っていく。
ならも後を追うように小走りで入る。

すると、菅原さんが立って待っていた。

「どうも、暑かったでしょう。」
「今日は暑いですね。35度くらいあるみたいですね。」
「ひや〜、まあ、上がって上がって。」

菅原さんが雷様にスリッパを履くように促す。
そして後ろにいたならに気付く。

「あ、門野さん、この方、昨日話した今度の陶芸の先生。峯岸くんのお兄さん。」

「あっ。」

ならはそこで初めて点と点が繋がった。
雷様が振り向く。
バッチリと目が合った。

「うちの、生活支援の方のバイトさん、門野さんです。」

菅原さんの紹介に、雷様は「ああ」と言って、ならの方に体ごと向ける。

「白峯窯の峯岸大和です。9月からお世話になります。」

ならはドキッとしながらも頭を落ち着かせた。

「ひだまりのアルバイトの門野です。よろしくお願いします。」

ペコッと頭を下げる。
菅原さんが続ける。

「門野さんはすぐそこの和東学院の学生さん。先月からバイトで入ったばかりだから、もしかして会ったことなかったかな?」
「え、和東学院?」

峯岸が再度ならの方を見る。