紗弥はある日の下校中、通学路を歩いていた。その時、ふと懐かしい声が紗弥の耳に入った。

紗弥は後ろを振り向く。紗弥の視線の先に立っていたのは、かつての紗弥の親友だった夏芽。夏芽は半透明だ。

「……夏芽…」

紗弥が呟くと、夏芽は「あ、私のことが見えてる?」と笑った。

紗弥は、夏芽に会えたことを嬉しく思い抱きつこうとした。しかし、夏芽の体をすり抜ける。

「……私、幽霊なの」

夏芽の言葉に紗弥は「…え?そ、そうなんだ…」と半信半疑に言った。

「紗弥、今からあそこに行こ!昔、私と紗弥で行ったあの場所へ!」

夏芽は紗弥について来いと言わんばかりに後ろを向いて歩き始めた。紗弥は慌てて夏芽の後を追いかける。夏芽の後を追いかけながら、紗弥は家族に帰りが遅くなることを伝えた。

「……早く早く!」

紗弥は必死に夏芽の後を追いかけた。紗弥たちが来た場所は、昔、紗弥たちが綺麗な星空を見た場所。

「…ここって…」

「そう。私たちが昔、星空を見た場所だよ。紗弥、約束を守れなくてごめんね?紗弥、夢を諦めないで欲しいの。私、前にも言ったよね?紗弥はまだ人生が長いんだから、自分の夢に向かって歩んで欲しいって…」

夏芽は紗弥を真剣に見つめながら言った。紗弥はそれを無言で聞いていた。

「……だから、簡単に夢を諦めないで」

夏芽は、紗弥の心を見透かしたように言った。

「…ほら、空を見上げてごらん」

夏芽は空を見上げた。紗弥も空を見上げる。空には、あの日見た星空と同じように無数の星が輝いていた。