「ちょっ!山田さん!どこ行くんですか?もうすぐでご飯ですよ?」

あれから数年の月日が経ち、紗弥は『介護老人保健施設』という入所施設に就職した。

介護老人保健施設とは、病状が安定期の方にリハビリ、介護、看護、医療を提供し、在宅復帰を目指す施設のこと。

「吉田さん。トイレ行きたいの?」

紗弥が声をかけると、車いすに乗った吉田さんはコクリとうなずいた。紗弥は、車いすのグリップを手に持ち、トイレの入口まで押していく。

「じゃあ、終わったらこれを押してくださいね」

そう言って紗弥は、食堂へと向かう。

「武田さん。今からご飯!食堂行きましょか」

紗弥はそう言って武田さんを誘導し始める。決して介護の仕事は楽ではない。それでも、紗弥は楽しく仕事をしていた。

「……山田さん。私が居ない間に作ったの?上手ですね」

食堂に着いた紗弥はエプロンを付け、昼食を配膳しながら言う。

(ありがとう、夏芽。あんたが居なかったら、私は介護の道を諦めていた。私は、介護の仕事と夏芽のことが大好きです)