「さて、復習です。ノーマライゼーションとは何でしたか?…じゃあ、春村(はるむら)さん」

先生の声が教室に響く。彼女、春村 紗弥(さや)は静かに答えを頭の中で探し始めた。

「…障害があっても普通の暮らしが送るようにする考え方のことです」

「そうです。じゃあ…ノーマライゼーションを提唱した人は?」

「あ!これは分かる!」

紗弥の隣で高橋 麗華(たかはし れいか)が声を上げた。先生は「お、何?」と麗華を見つめる。

「パンク・ミセラレケン!」

その答えに周りは一斉に吹き出した。紗弥も一緒になって笑う。

「タイヤがパンクしたのを見せたくない人みたいな名前だね」

先生はそう言って笑った。その言葉が紗弥の笑いのツボにハマったのか、中々紗弥の笑いが止まらない。

「…麗華ちゃん、バンク・ミケルセンね。バンク・ミケルセンの出身国は?」

「デンワーク!」

今度は地理がとても苦手な山中 雪乃(やまなか ゆきの)が答える。

(デンワーク…電話とワークをかけてみました…みたいな?……わけ分からん)

「雪乃、違うよ!マークデン!」

雪乃の答えを指摘した神崎 千紗(かんざき ちさ)の回答に、紗弥は笑いを止めない。

(マーク出ん?何それ)

「デンマーク!」

世界に興味がある吉井 桜花(よしい おうか)は皆の隙をつくかのように答えた。

「お、やっと答えが出た!そうです。バンク・ミケルセンさんは、デンマーク出身です!皆さん、ちゃんとテストで間違わないように」

福祉の授業担当である五十鈴(いすず)先生はニヤリと笑った。