あぁ、そうか。
当時の本店のメンバーは、みんな散り散りになってほぼ残っていない。昇進したり転勤したり…なので当時を知る人は、土日しか来ない着付け担当のおば様ぐらいだろう。

「もう三年前?随分前の話ですけどねぇ…」

「さすがに有沢さんも前例がなくて驚いてたよなぁ」

「うんそうだね。まだこはるちゃんが出した一日六十二万は破られてないと思う」

六十二万、という数字を聞いて更に驚く店舗のスタッフ。
確かにあの頃は飛ぶように売れてはいたが…。

「当時はまだ珍しさがあったから余計に売り上げ高かったような気がしますが……」

何度も売り上げ凄いね!と言われていたが、あまりピンとは来ていなかった。
まぁうちで始めての事業なので、比べるものがなかったということもある。


「それもあるかも知れんが、時松自身の技量もあるだろう」

「そりゃそうよ、教えた私がびっくりしたんだから」

「あれだな。怪しい訪問販売やらせれば相当稼げるかもな」

清貴さんの発言に、みんなが一斉に笑い出す。何だその怪しい訪問販売って……。