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「なぁ、そういやなんで稲荷って狐なんだ?」
「正確に言えば狐は眷属(けんぞく)と言って稲荷神の遣いなんですよ。もちろん狐をお祀りしている所もあるみたいですが」
「そうなんだ。初めて知った」
時刻は午前八時前。ちょうど十五日のいなりの日。
前日から仕込んであったおいなりさんを朝食に出すことを知ってか、いつもより清貴さんはほんの少し早くリビングにやってきた。
そして味噌汁と漬け物をつまみながら、おいなりさんを食べている。
いつもは年齢以上の風格のある人だが、なんだかむしゃむしゃと頬張る姿は、いつもよりも大分幼く見えてしまう。
「んで、なんで狐?」
「それが正直、はっきりしないらしいんですよね。いくつか説はあるんですがちゃんとした文献が残ってないみたいなんですよね」
「なるほどなぁ」
「そもそも稲荷信仰自体、よくわからないぐらい昔からあるって聞いたことあるんですよね。伏見稲荷大社の御鎮座より前からあるっていう話だから、奈良時代より前から続いてるみたいですね」
「へぇ……そりゃすごいな」



