もう一度キリッと睨み付ける…が、清貴さんは動じない。


そしてちょうどエスカレーターが終わりに差しかかる。清貴さんが前を向き、エスカレーターを降りると‐ふわっと手はほどかれた。

良かった解放された…と思ったのも束の間。
エスカレーターを降りて一歩踏み出した所で、清貴さんは振り返る。

そして右手が延びてきて……私の顎をクイッと持ち上げた。



「あしらう練習をしてみなさい?」

目の前には‐余裕ぶった笑顔の清貴さん。
澄んだ瞳に吸い込まれるように、一瞬時が止まる。

でも数秒後には我に返り‐再び顔が再沸騰。
一気にかあぁぁっと火照ったように熱くなる。


それを嘲笑うように、清貴さんは「できればな?」と囁く。
そして踵を返すように、勢いよく振り返って店舗の出入口まで歩いていった。


暫く呆然としていたが…再び我に返る。

(あしらう練習…あしらう連絡………)

心の中でそう唱え続け、私も早足で出入口に向かって歩いて行った。