そのまま手を繋いだ状態で、エスカレーターを下っていく。

「清貴さん……あの………」

「なんだ?こはる」

「………手…どうにかしてください…………」


もうさっきから顔の熱さが引かない。
しかし清貴さんは振り返ると‐クスリと口角を上げる。

「馴れてないねぇー。男の人に」

「しつれ……」いなと言いかけたが、図星である。
恋人なんぞ居たことすらないのだ…。


「いいじゃないか?新婚ごっこ」

ごっこ…にしては刺激が強すぎる。
そして勿体無い。

「予行演習だと思えば?行けず後家さん」
いや、勿体無いを撤回する。


「いじめられる趣味はありません…」
イラッとして咎めるような視線を投げる…が、清貴さんは気にしないと言った感じで飄々としている。

「ついついいじめたくなるんだよなーこはるは」

いじめたくなるって何なんだ。
「……他を当たっていただけると嬉しいのですが」

「嫌だね」

何ですと?