そして私達は開店準備に取り掛かる。
綺麗に髪飾りや帯留めの棚を並べ直すと、私は着物姿に着替えた。この日は受付担当なので着物姿。
来店予約のお客様をチェックしていると‐社長、いや清貴さんが話しかけてきた。

「失礼ですが、ご両親は何をされていますか?」

「えっと……至って普通ですけど……それが何か?」

「いえ、着物姿でも立ち振舞いが非常に美しいので、ご両親から何かをずっと教えられてたんじゃないかなと」

「えっと………祖母が日本舞踊の先生でして、幼い頃から教わっておりました」


まぁこれも事実ではあるのだが…まぁ気付いていたから探っていたんだなと言うのが、今になってわかる。


「若いのに似合っていて素敵ですよ、こはるさん」
そうにっこりと笑う姿に、胸の高鳴りを覚えたものだ。


そして呼び名は『さん』から『ちゃん』になっていて………気が付けば呼び捨てで呼ばれるようになっていた。
それはまだ、彼が君主として降臨する前の話である。