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‐あの人は、私に『呪い』をかけた



いつも私を叱る時に言う、口癖。



「こはる?お前は何のために産んでやったか分かるか?」

そう言って頬を叩くと、胸ぐらを掴んで吐き捨てる。


「お前は立派な大人になる義務がある。
兄を支え、神社を支え、この地に根差した人に嫁に行き、夫婦でこの地を支える。
その為に産んでやったんだ」

そしてさっきと反対の頬を殴る。
それまでが、全てセットになっている。それが‐お祖父様の叱り方。

誰も逆らうことができない、うちのお祖父様。
両親も誰しもが言いなりで、止める人は誰も居なかった。



叱られた後は、いつも近くにある定食屋さんの裏口に行く。そこのお姉ちゃんに会うためだ。


「こはるちゃん、はい。私が作ったクッキー。どう?」

いつもそこのお姉ちゃんは、『お腹がすいてると余計に落ち込むから』という名言(迷言?)を言いながら、何かしら食べるものをくれた。
お姉ちゃんの手作りのお菓子や、余ったご飯で作ったおにぎりなどなど……。
それはおやつまでも徹底的に管理されていた私にとって、お姉ちゃんは女神のような存在で。