稲荷と神の縁結び

その姿を見ていると、私は堪らなく…堪らなく、羨ましくなる。
だって私は、こんなにも愛に溢れた祖父の存在を知らない。

‐私達は祖父にとっての『駒』でしか無かったのだから。


「私は清貴さんが、羨ましいです。こんなに馨様に思われているって…」

「でも、私はもうすぐあの世にいくよ。だから、君に清貴をお願いしたい」

「私なんかができることは…何も…」

「何もしなくてもいいんだ。そのままでいい。ただ……嫌わないで欲しい。
今の清貴は、仕事に没頭しすぎだ。若さ故の過ちを犯す日が、きっと来る。君だけは、裏切らずに…清貴が道を外さぬように、諭してあげて欲しい。それはきっと、一緒に積み上げてきたものがある、君にしかできないことだと思うんだ」


馨様にそう言われて、はっと気付いた。
私はずっと、彼が社長としてやり易いようにと、希望を叶えてあげようと、日々あぐねいていた。
それが『そのままでいい』という言葉に、吹っ切れた気がしたのだ。