稲荷と神の縁結び

とりあえず着替えないことには始まらないらしい。
私は渋々作務衣を脱いで、ワンピースに袖を通す。

「あの…一個いいですか?」

「何?」

「羽島って滋子様の旧姓ですか…?」

「あぁうん、そう」

「一体こことどう繋がりが……」

「VURGUE(ヴァーグ)って雑誌知ってるか?」

「えぇ、はい、一応は……」

VURGUEとは欧州発の、世界各国で発行されている雑誌。ハイファッションの最先端を行く雑誌として世界中の人が知っているはずだ。いつも名門ファッションブランドが軒並み取り上げられていて、日本ではこの雑誌がきっかけで欧州のブランドを広めたとして知られている。

「母さんは、その日本版のスタイリストやってたんだよ」

「えぇぇぇっ!?」

かの有名な………それこそ世界中が注目する雑誌のスタイリストだったとは……!
そりゃあのクレオパトラと言われるセンスも納得が行く。


「俺が小学生ぐらいまでやってたな」

「えっ…じゃぁ滋子様って……」

「一応スタイリストとして、こういうハイブランドの中ではかなり有名らしい」

まさか……そんなすごい人が、今は呉服を扱う会社の奥様だとは……。