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「アニマーリア」メルトタウン・路地裏。
アラド、狼族19歳、旅人。

今、僕は夢でも見ているのだろうか。
「コア…付いてない、ほんとに人間だ…!」

見た目こそ僕達「アニマ」と良く似ているものの、僕の目の前に横たわってすやすやと眠る「少女」は、昔本で見た「人間」そのものだった。

「うわぁ…すご、ほんと似てる。」

その本によると、アニマと人間の違いは「コア」が付いているか付いていないか、という事だけらしい。

「コア」というのは、この国「アニマーリア」に住むアニマ全員が持つ種族の証だ。人間は「コア」を「耳」と呼ぶらしい。もちろん僕にも、頭に狼のコアが付いている。

「…ん、なんだこれ、メモ…?」
依然として眠ったままの少女の側に、小さな紙切れが置いてあった。

「なになに…『この子の目を覚まさせて下さい』?」
メモには少々不恰好な字で、そう書き記してあった。

この子、というのはこの少女の事だろうか。つまりこの少女を起こせと言っている?

「…え、えーと…あ、あのー、起きてください…?」
少女の身体を軽く揺すってみる。
が、少女の瞼はピクリとも動かない。

「…えぇ……どうすれば……」
『…ねェ』
困り果てていたその時、不意に頭に声が響いた。

「…な、なになになに⁉︎誰⁉︎」
慌てて辺りを見回すが、誰もいなかった。
という事は…

少女を見ると、髪で隠れた少女の首が僅かに光って見えた。

「…?」
『…聞コえる?…ワタシ。キみの目の前ノワタシ。』
僕は、再度周りを見渡した後、また少女に目を落として「うん」と答えた。

『良かっタ…少しノ間しカ話せなイかラ、よく聞いテネ。』
「わ、わかった。」
機械音のような、だけど透き通るような声だった。

『そこに…今キみの目の前にイるワタシは、人間じゃナイの。』
「…え、で、でも」

声が重なった。

『ワタシは…ロボットなノ』
「………ロボット?」