その後1時間程度他愛のない思い出話に花を咲かせ、気づいたら時刻は20時過ぎ。
お皿もグラスも空になっていた。

時間を確認して、あずさが満足そうに口を開く。

「よく食べてよく飲んだね〜。久々にいっぱい話せて楽しかった。
そろそろ彼氏も飲み会終わるみたいだからそろそろ解散でも大丈夫?」

「うん。今日はありがとう。私も楽しかった」

「また飲み行こうね。透子、先外出てて」

伝票を取ろうとする私の手を止めて、彼女が促した。

「ほんとにいいの?」

「当たり前だよ。紹介した甲斐があったんだから」

「ありがと。じゃあお言葉に甘えて」

先に席を立って外に出ると、湿度の高い空気に包まれた。
もう梅雨は明けたんだろうか。今朝見た天気予報の週間予報は晴れになっていたけど。

「お待たせ」

駅に向かう人の流れを見ながらぼんやりしていると、後ろから高い声が聞こえた。

「ありがとう。ご馳走様」

「いえいえ、どういたしまして。急に誘っちゃったのこっちだしね」

ゆっくり坂を下りながら駅の方へと歩く。

「たまには女友達と話さないとダメだね。基本的に彼氏といる時間に慣れてきてたけど、今日いっぱい話していっぱい笑ったら、すごくリフレッシュできたなーって思った。
彼氏に不満があるわけじゃないけど、やっぱり透子といる時の方が素直にはしゃげて何も気にせず話せるな」

天真爛漫なあずさでも、彼氏の前だとそれなりに肩肘張ったりするんだろうか。
男女交際は難しいものだ。

「彼氏できたところで基本的にスタンス変わらないし、私で良ければいつでも誘ってよ。
私もこれから聞いて欲しい話がいっぱい出てくると思うし」

「うん。ありがとう。
持つべきものは学生時代からの友達だね〜」

嬉しそうに声のトーンを高くしてそう言うと、私の腕にしがみついてきた。
素直に自分の感情を言動で表せるのが彼女のいいところだと思う。
ただ、私よりも10センチ近く背の高い女の子に腕を組まれるのは、だいぶ側から見たらアンバランスだろうけど。