酔わないように、少なめに一口飲み込む私とは対照的に、勢いよくごくごくと喉を鳴らす雅也くん。
しかし表情はいつもより堅かった。
「急に無茶言ってごめんね、人目気にせずに話したくて」
すこし申し訳なさそうにそう呟かれた。
「いやいや、ちょっとびっくりしたけど大丈夫。むしろご招待ありがとう」
「優しいなー。気を遣わせないのが上手だね、透子ちゃん」
いつも彼に対して思っていたことをそのまま言われてしまったので驚いた。
「それ、雅也くんの方じゃない」
「そうかな?特に意識したことないし、結構わがまま言ってると思ってたんだけど」
自分から見た自分と、他人から見た自分はこんなにもギャップがあるものなのか。
もう少し正直になるためにさらに一口飲み込んで、ゆっくり話し始めた。
「私の好きそうなデートプランを提案してくれたり、私が雨に濡れないように歩いてくれたり、何の気無しにやってるのかもしれないけど、雅也くんの行動が優しいなって思うことが今日だけでもたくさんあったよ。ありがとう」
それを聞くと少し驚いた表情をしたあとに、彼が口元を緩めた。
「透子ちゃんが楽しいって思ってくれるのが自分も嬉しいから。そう思ってくれたならよかった」
その言葉を聞いて、安堵した。
本当に純粋な人なんだな。


