会場時間ぴったりのタイミングで手を引かれ、落ち着いたライブレストランに入り、ステージから程近い席に並んで腰を下ろした。
サラダとポテトフライをつまみながら、ワインで開演の時間を待つ。
生演奏を聴くなんて久々だし、こんな大人な場所でライブを鑑賞するのは初めてなので緊張もあるけど、どちらかと言えばワクワクした気持ちのほうが大きくなる。
「こんなこと言うのもおかしな話なんだけど、俺女の子と一緒にライブ観るの初めてで。
透子ちゃん音楽好きって言ってたから一緒にはしゃぎたいんだけど、加減がわからないから落ち着いたところ選んだの。ちょっと背伸びしちゃったから、テンパってたらごめんね」
恥ずかしそうにそう言うと、ワインを一口飲み込む彼。
正直に話すところが彼らしくて、口元が緩んだ。
「全然そんなこと気にしなくていいのに。ライブではしゃぐのは私も同じだし。むしろここまでことの運びがスマートだなって思ってたけど」
「カッコつけられてたならよかった」
安堵からかまた子供の笑顔を取り戻し、カリッと美味しそうな音をたてながらポテトをかじった。
そういう私も男性とライブに行くなんて、社会人になってからしてなかったな。
学生みたいにふざけるのも、少し背伸びした大人の遊びもできるとこが同年代のいいところだと思った。


