「注いでくれてありがとうございます。
ちゃんとまともに付き合ったのは、陽さんと知り合う前に別れた大学時代の同期くらいで。
それ以外は基本的に関係性を明確に言えないような形でしか男の人と関われなかった。
私が自分に素直じゃないし、男性関係で感情が乱されたりするのが嫌だったんだと思います。
だから陽さんともあんな形で知り合ったし」
たった一年前の事だけど、はるか昔の事のように思った。ここ数日だけでも彼との思い出がたくさんできたから。
「出会い方を掘り返されると苦笑いするしかないな。
最初からお利口なタイプで育ってきた子なんだろうなと思ったけど、今まで自分の気持ちと向き合ったりすることが少なかったんだね。
良くも悪くも物分かりのいい、大人らしい子だなって最初に感じた印象はあながち間違ってなかったのかも」
苦い顔をして笑ったかと思ったら、視線を私の方に向けて彼がしみじみとそう言った。
「私、初対面の時からそんな風に見えてました?」
ここは笑っていいものなのか分からず、つられて私も苦く笑うしかなかった。
「初対面の男と会うんじゃ当たり前だし全然気にしなかったけど、付き合いが長くなってもその印象が変わらなかったから、心のパーソナルスペースを保ちたい子なのかなっていうのは思ったかな。
別に俺に対しては必要以上に親しくなる必要もないしね。
けど、ここ最近でだいぶ透子ちゃんのイメージが変わったかな。泣いたり笑ったり、こんなに感情を出してくれて嬉しいなって思った」
相手にそう受け取られているのなら、今の私は相当陽さんに心を許しているんだろう。
自分でもそれなりにその自覚はあった。


