一呼吸おいてドアを開けると、待たされたことは何も気にしていない表情の陽さんと目があった。
「お待たせしました、どうぞ」
「ありがとう。なんか押しかけたみたくなっちゃってごめんね」
女性もののハイヒールの中に歩きくたびれたスニーカーを揃えて脱いで、彼が部屋の中に入る。
「いやいや、呼んだのは私の方なんで。ほんとに可愛くない部屋ですが」
それなりに調理器具の揃ったキッチンを通り過ぎて、リビングに彼を入れる。
「わ!物少ないね!綺麗なお部屋」
改めて生活スペースを見ると、セミダブルのベッド、ダイニングテーブルに椅子がふたつ、小さめのソファ、あとはレコードと少数精鋭の本が入った棚、オーディオプレーヤーと、我ながら女らしくない部屋だなと感じた。
物が少なく感じるのは大きめのクローゼットのおかげだろうけど。
「物が少ないはよく言われます。
とりあえず座っていただいて、ビールでも飲みましょう」
椅子をひいて彼に座るよう促した。
どこに行ってもやることは変わらないなと思うのは果たして何回目だろう。
ただいつも私が座っている席に彼がいるのはどうも慣れなかった。


