part-time lover



陽さんの言葉通り食べるよりも飲む派の私たちは、サンドイッチに比べてビールの減りの方が明らかに速かった。
口を咀嚼よりも会話に使いたい気持ちがお互い強いのか、昨日あれだけ一緒にいたのに会話のスピードが止まらない。


「透子ちゃんは彼氏とどんなデートするの?」

「ご飯食べに行ったあとどっちかの家に行くのが多いですかね。
陽さんは奥さんと二人でお出かけしたりするんですか?」

「二人ではないかな〜大体家族で。子供主体で動くから、デートらしいデートなんてなかなかないよ」

「それでも若い時とかはしたんでしょ?」

「そうねー、妻の顔色伺いながら行きたそうなところ提案してたな。
けどそれも学生時代だからね、社会人カップルの事情は全然わからないや」

これだけ今話をしていて心地よさを感じているのに、生まれ育った環境や生きてきた時代が全く違うことが不思議だった。

「社会人2年目なんて、学生ノリ引きずってるようなもんですけどね。結婚とか全然考えられないし」

「俺も子供ができなければ今頃はまだ独身だったかも。たられば言っててもしょうがないけど」

「そういう違う世界を想像するのも楽しいじゃないですか。結婚してなきゃ私は陽さんと知り合えてなかっただろうけど」

「それならこれで正解だね」

皮肉なことに本気になれない間柄だからこれだけ波長が合うらしい。

「そうですね、ちょうどいい関係」

そう呟いたあと、ちょっといきすぎてるかもしれないけどと心の中で付け加えてビールを飲み込んだ。

何でこういう時は爽快感よりも苦味を感じるんだろう、私の味覚は。