「良かったな。夏樹」

私たちの様子を見ていた陽太が私の耳元で囁くようにいって去って行った

正面を向いていた顔が無意識に陽太を追う

「ねぇねぇ、ところでさ〜日野とはどんな関係なの？」

私と陽太のやりとりを見ていた3人のうちの1人が聞いてくる

「あ〜それ思った！お互いを意識してる感じとか！」

「確かに！日野、他の女子にはしないもんね！」

2人、3人とみんなが盛り上がっている

「ねぇ！どうなの！？」

今度は3人同時に聞いてくる

…ち、近い…！

3人はズイズイと距離を詰めてきていて今では目と鼻の先に彼女たちがいる

勢いに負け後ろに下がっていたので私のすぐ後ろには壁がある

3人の質問に応えようと陽太との会話を頭に巡らせる

だけどこれといった答えが出てこなかった

「…分からない」

関係性を表す言葉は数え切れないほどあるがどれも私と陽太の関係を表す言葉ではない

「まぁ少なからず陽太は脈ありだと思うなー」

考え込む私に一言

「何が？」

他2人は言葉の意味がわかっているようだが私には分からず聞く

「立花さんって鈍感なんだねー」

1人納得したように言う

「え、え？」

待って！理解できないことばっかりなんですけど！

困って目をおそがせていると

「今分からなくて大丈夫！いつか分かるから」

その子はニヤリと苦笑いをする

「この詩人は”あなたが好きです”と言う言葉を"月が綺麗ですね"と伝えました」

先生が指し棒を黒板に向けながら説明していく

その言葉を聞き取りノートに書いていく

“好き”その言葉で頭の中で陽太が出てくる

…なんで陽太が出てくるの？

自分自身にツッコミのようなものをする

「なんで”月が綺麗"が”あなたが好き”ってことなんですかー？」

クラスの男子が手を挙げ先生に質問する

「きっとあなたと見る月は綺麗に見えると言う事が言いたかったんじゃないかしら」

先生の言葉にスッキリしていない人が多い中うなづく

無意識に陽太を見ると理解できないのかポカーンとしている

…私どうしたんだろう

最近集中できていない気がする、何かを気にしているようなそんな気がする

自分のことなのに分からないことだらけでモヤモヤした気持ちが残っている

「立花さん？大丈夫？さっきからボーっとしてるけど…」

大人しく優しいクラスメイトに話しかけられハッとする

どうやら国語の授業は終わっているようで他の人は教室を出たり話したりしている

「え？あぁ大丈夫」

「そお？体調悪くなったら言ってね！私放送委員だから！」