久しぶりのその言葉が嬉しくて

「ありがとう」

涙ぐみながら目を見て伝える

「チッ何、あいつ…」

どこからか強い舌打ちと睨まれているような視線を感じる

…気のせいだよね…

自分にそう言い聞かせる

「どうした?」

ボーっとしていたからか心配そうに私の顔をのぞき込む日野くん

「ううん。なんでもない。」

作り笑いをして答える

嫌な事が起きる予感がした

「あいつマジでキモいんだけど」

空き教室の前でクラスメイトの声が聞こえる

「立花だっけ?マジそれな」

『立花』その苗字は私にしか当てはまらないためすぐに私のことだと気付いて足を止める

「他の人には無表情で話しかけてこないくせに陽太には楽しそうにして、ほんとキモい」

「しかも、あたしらには無視」

女子たちは私の悪口で盛り上がっている

「ねぇ何話してんの?」

次の瞬間日野くんの低く怒ったような声が聞こえた

反射的に振り返ると扉にもたれかかっていた日野くんが女子に近づいて行く

「え、陽太!いやなんでもないよ!」

女子たちは日野くんを見て焦り早口に言う

「夏樹に何か言ったら許さないから」

日野くんの目はちっとも笑ってなくて本気で怒っていた

「大丈夫だよ!そんなことしないからっ!」

女子たちは日野くんの怒りを感じ取り否定し始める