~月曜日~

「おはよう、太一君。」

いつも通り、姫子と靴箱の所で会った。

「おう、おはよう姫子。」

オレは、靴箱に靴を入れながら答える。

「あのさ…」

「姫子」

オレは、姫子の話しをさえぎる様にして、会話をふる。

「何?」

少し驚いた様に姫子は、答える。

姫子が驚くのは、無理もない。

基本、オレが会話をふる事は無い。

「今日、姫子の家に行っていいか?」

キョトンとした姫子は、何と言ったか分からないと言わんばかりの反応をする。

「……えっ?」

靴が床に落ちる。

おいおい、そんなに意外か?

「今何て言った?」

姫子は、靴を拾う様子も無くオレに問う。

オレは、姫子の靴を拾い、渡しながらもう一度言った。

「今日姫子の家行ってもいいか?」

そして、沈黙。

姫子は、やはりキョトンとしている。

オレも何とも言えない。

あの笑顔で、あのゲームで勝った時の笑顔で良いよと言うのかと思ったが、実際は違っていた。

姫子は、泣き出したのだ。

流石にこんな展開は、予想して無かった。

どうしてだ?

オレ何かしたか?

「ひ…姫子?どうしたんだ?」

理由を聞くが、姫子は泣くだけだ。

「だって、だって、たっ…太一が」

学校で、オレの事を"太一"と呼んだ。

オレの方がパニックだ。

「太一が、誘ってくれたから…」

姫子は、涙を拭いながら、オレの方を向いた。

あのゲームに勝った時と同じ笑顔で。

「太一が誘ってくれて、つい嬉しくて…」

オレの手かから、靴を取り、靴箱に入れた。

照れくさそうに、こっちを向き、姫子は歩きだした。

オレも後に続く。

姫子は、下を向きながら、ポツリと話し始めた。

「私ね、太一は本当は、私の事好きじゃないのかなって、思ってた。」

姫子は、一度オレの方を向いて少し笑うと、もう一度下を向く。

「最近、私が着替えて玄関に行ってもいないし、電話しても、嘘つくし、私の事なんてどうでも良いのかなって思ってた。」

そうか、バレてたのか。

オレが嘘ついてるって事。

「だからね、今日もしいなかったら、別れようと思ってたんだ。だから…つい嬉しくって」

姫子は、笑った。

その笑顔は、今まで見た笑顔の中で1番可愛いかった。

やっぱりオレは、姫子じゃないといけないんだ。

姫子が好きだ。