キーンコーンカーンコーン

6限目の終わりのチャイムが鳴り、やっと1日が終わった。

そして、オレのミッションが始まる。

今回のミッションは、昨日に引き続き、姫子から逃れる事。

昨日は、姫子に思わくをきずかれ、あっさりと家に行かされた。

今日は、HRが終わると同時に、教室を出、学校からでる。

「起立」

帰りの挨拶の為に全員が立ち上がる。

ここだ。

ここが勝負だ。

日直が礼と言った瞬間に、オレは教室を出る。

「礼」

オレは、駆け出した。

別に珍しくはない。

真面目に塾行っている奴らとかは、毎日そんな感じだ。

だから、オレはいい感じにその集団の中に混じり、姫子の追跡を逃れる。

昨日は、たまたま姫子がきずいただけ。

流石に2日連続で行くとは、分からないはずだ。

はず…だったのだが…

「太一君、捕まえた。」

オレは、腕をガッチリと捕まれた。

可愛い声で言うが、オレにとっては、悪魔の囁きにしか聞こえない。

「もう、どこに行くの?私の家行くんでしょ?」

教室も無理だったか…

オレは、姫子に捕まれられ、今日のミッションは失敗した。

ルンルンと、スキップ気味に歩く姫子。

靴箱へ向かっているオレと姫子の気持ちは、おそらく、てか絶対に真逆だろう。

姫子は、気分が良く、オレは最悪。

何度も言うが、オレは決して姫子が嫌いな訳じゃない。

だが、毎日彼女の家に行くのが、嫌なだけだ。

部屋着が可愛い、とかなら問題ない。

だが、やはりあの部屋着は、可愛い以前に、問題があり過ぎる。

最初に見た時、こいつは中二病なのかと思った。

おかしいだろ、あんなリボンを足に巻きつけるとか。

姫子の家に向かう道。

人通りが多く、そのため姫子を見る人の数も多い。

彼氏としては、嫌な気持ちにはならない。

オレは、姫子の事を本当に可愛いと思うし、何より自慢したいレベルだ。

だが、一人の人間としては嫌な気持ちになる。

なぜか、うっとうしいからだ。

それ以外の理由はない。

時々、オレがストーカーだと勘違いされる時もある。

姫子は、いつもの笑顔でオレに喋っているが、それでもちょっと頭のイカれている奴が姫子を守ろうと、オレに攻撃した事がある。

こっちにとったら、大迷惑だ。

ストーカー呼ばわりされるわ、攻撃されるわ、一人の人間としては、嫌な気持ちになる。

そして、オレは、ゲームに付き合わされるのだ。

ゲームは好きだが、姫子のやるゲームは、オレのとは違い、頭脳系だ。

ここら辺は、学校での姫子の要素があるんだが、難易度が半端じゃない。

2人で対戦するのだが、当然オレが負ける。

今まで何回もやったが、オレが勝った事は1度もない。

つまり、苦痛でしかないのだ。

オレにとって、ゲームは楽しくやる物だ。

なのに、なんで30秒以内に方程式解いたりしないといけないんだ?

しかも、姫子解けてるし…

はぁ、全く、早く家に帰りたい…

姫子の家に着いた。

彼女の家は、マンションの最上階にある。

名前からもだいたい推測できるが、姫子はお嬢様だ。

誰もが1度は聞いた事のある会社の社長の娘。

それで美人なのだから、女子にとっては嫉妬ものだな。

「太一君、今日は私の部屋に来て。」

笑顔で言う姫子だが、その裏に隠された意図は、オレでも想像がつく。

今日は絶対逃がさない、という事なんだろう。

こいつは、頭が良いのか悪いのか分からない。

少なくとも、人間的な回路は、ぶっ壊れているだろう。

今、オレの心配している事は、姫子がオレの前で着替えるかどうかだ。

もし、着替えるのであれば、オレはすぐさま逃げ出す。

「こっち見ないでよ、変態。」

「バーカ、お前の方見ないに決まってんだろ。」

姫子は、オレを部屋へ無理やり連れていき、何故かベッドに座らされた。

そして、姫子は、クローゼットの方へ行く。

…くそ。

部屋の位置的に、クローゼットの方が、ドアよりも近い。

それに、今姫子の方を向いたら、殺される。

どうする、オレ。

このまま何もしなかったら、オレは姫子とゲームをしなければならない。

あのゲームは、地獄でいかない事は明白。

何が何でもしたくない。

早く家に帰って、ゲームのレベル上げしたいのに。

今行動を起こさなければ……だけど………

ドアの方を向けば、姫子の着替えるところを見てしまう。

かと言って、姫子にゲームでボロ負けするのは、嫌でしかない。

あぁ……どうすればいいんだ……

「お待たせ」

姫子がオレの肩を叩く。

「おっ…おお…」

後ろを向くと、姫子がいつもの服を着て、オレを笑顔で見ていた。

最悪だ…

こうしてオレは、姫子のゲームに3時間付き合わされた。