「訓練、期間とは」
やっとのことで絞り出した声は小さかった。
「俺らが組の人間としてやっていくための、訓練期間」
そうだ、忘れていた。
仁は暴力団の若頭だったのだ。
…マークと同じようなことをする人達。
人を脅し、クスリを買わせて金を巻き上げる、あたしが最も嫌いで憎い職業。
琢磨から聞かされたときは混乱して、とても辛かったことを今、記憶の中から蘇らせた。
「いつ、本格的にそちらの方に就くの?」
「高校卒業次第すぐってとこだ。それまで俺らはこいつらを護る。だけどな」
仁の顔が曇った。
「だけど?」
「これからいろんな危険がお前の側についてまわる。その時に俺がお前を守りきれるとは言えないんだ」
守りきれると言える方が、頼りない。
だってこの世に絶対なんて存在しないのだから。
だけどね?
「今更、なにを言っているの?」



