蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「訓練、期間とは」


やっとのことで絞り出した声は小さかった。


「俺らが組の人間としてやっていくための、訓練期間」


そうだ、忘れていた。


仁は暴力団の若頭だったのだ。


…マークと同じようなことをする人達。


人を脅し、クスリを買わせて金を巻き上げる、あたしが最も嫌いで憎い職業。


琢磨から聞かされたときは混乱して、とても辛かったことを今、記憶の中から蘇らせた。

「いつ、本格的にそちらの方に就くの?」


「高校卒業次第すぐってとこだ。それまで俺らはこいつらを護る。だけどな」

仁の顔が曇った。


「だけど?」


「これからいろんな危険がお前の側についてまわる。その時に俺がお前を守りきれるとは言えないんだ」


守りきれると言える方が、頼りない。


だってこの世に絶対なんて存在しないのだから。



だけどね?


「今更、なにを言っているの?」