「どうして。それに千夏ちゃんは?」
彼女の姿が見えない。
ここにいるのは仁だけのようだ。
変わってしまった、あたしの知らない仁が。
「千夏は家に帰した。あいつは関係ねえ。お前がここにいるとみんなの邪魔になる。お前はそれを分かんねえのか?」
邪魔をしているつもりなんてなかった。
あまり目立たないようにしていたつもりだったのだ、千夏ちゃんと喋るなどして彼らと良い距離をとろうとしていた。
それが…邪魔になっていた、なんて。
知らない、知らない。
「ずっと居なかった仁にそんなことを言われたくないわ」
「ずっと居ようが居まいが、それは関係ねえだろ」
関係、ない……ですって?
「あるわよ!あたしはずっと貴方がどこにいるのか、無事なのか不安で仕方なかったというのに!」
「じゃあなんでここに居るんだよ!不安なら探すだろ」
「それは……!綾に止められて」
「俺は大事な人がいなくなったなら、誰が止めようが捜しに行くけどな」
それは、そうかもしれない。
大切な人が居なくなったなら、迷わず捜しに行くのかもしれない。
だけど、綾の言いたいことだって分かるのだ。



