蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「どうして。それに千夏ちゃんは?」

彼女の姿が見えない。


ここにいるのは仁だけのようだ。


変わってしまった、あたしの知らない仁が。


「千夏は家に帰した。あいつは関係ねえ。お前がここにいるとみんなの邪魔になる。お前はそれを分かんねえのか?」


邪魔をしているつもりなんてなかった。


あまり目立たないようにしていたつもりだったのだ、千夏ちゃんと喋るなどして彼らと良い距離をとろうとしていた。


それが…邪魔になっていた、なんて。


知らない、知らない。


「ずっと居なかった仁にそんなことを言われたくないわ」


「ずっと居ようが居まいが、それは関係ねえだろ」



関係、ない……ですって?




「あるわよ!あたしはずっと貴方がどこにいるのか、無事なのか不安で仕方なかったというのに!」


「じゃあなんでここに居るんだよ!不安なら探すだろ」


「それは……!綾に止められて」



「俺は大事な人がいなくなったなら、誰が止めようが捜しに行くけどな」


それは、そうかもしれない。


大切な人が居なくなったなら、迷わず捜しに行くのかもしれない。


だけど、綾の言いたいことだって分かるのだ。