「それで、和佳菜。イギリスからはいつ」


「さっき。その足で来たからキャリーケースも持ってきたわ」

「連絡入れてくれたら、迎えくらい出したのに」

「本当に来たかしら?」

怪しく思うのは、当然だと思う。

何故かは、分かりきった話だが。

「あの子が嫉妬するから出さなさそう」


「そうじゃなくても、出させねえわ。俺は反対する」

1人、あたしを激しく睨みつける男が左手前に座っている。

「…悠人」


「よく帰ってきたな。裏切り者が」

呼吸が一瞬だけ、浅くなる。

「悠人、それは違っただろ」

「それでもこいつが放った言葉に変わりはねえんだよ!」

綾がなだめたって、彼は最初からあたしを認めていないのだから、仁の言葉だけを聞いて納得できるほど器用ではないのだろう。

真っ直ぐな男。

あたしは人間として好きだけど、それが一方通行しては虚しさが押し寄せるだけだ。

「そうね、どうして入ってこれるのか、あたしだって謎よ。もしかしたら心がないのかも」

「おめっ!おれのこと、なめてんのか?」

「はあ?あたしの言葉のどこをどういじったら、悠人をなめていることになるのよ」

この人もこの人で言っていることが意味不明だが、考えていることはわかってしまう。

元いた、したっぱのメンバーのように、あたしを決して受け入れてはくれないのだ。