だけどまだあたしの警戒心が完全に解けないのは。


恐らく始めに会った時に見た彼女の目のせいだと思う。


狂ったように仁だけを見つめるあの目を。


怖いと思わない人はきっといない。


あたしはそれさえ忘れれば、彼女を仲間だと思うほど仲良くなっていた。


「仁!ジュース買おうよ」


「じゃあ、翔も連れて」


「やだ!2人で行きたいの。ほら、早く!」


彼女はよく仁と2人きりになることを望んだ。

今もそう、あたしなんか目もくれず仁の腕を引いて暗闇に消えていく。

「行かなくていいんですか?」

ふと視線をあげると、陽太が少し不安げに倉庫にある縁石に腰かけたあたしを見つめていた。

「…いいのよ」

「盗られちゃいますよ?」

そっとあたしを覗きこむ。

呆然と見ているあたしは自信があってそうしているわけではない。

寧ろ逆で。


割り込む勇気も自信もないから、こうして見ているだけなのだ。