聞きたいのに、聞けない。



言葉を思うように扱えない。


「…南、あんた」


「副総長サマ全然こないね。ここでいつまでも待ってららないし、今日はおいとまするよ」


さらりと逃げた南をもう追うつもりはなかった。


証拠1つ掴めていないのに、問いただしたところで何かが変わるとは思えない。


「じゃあね、あたしはあんたに会いたいとは微塵も思わないからもう来なくていいよ」


「仕方ないじゃん。会いにきたのは副総長サマなんだし」


じゃあ、なんであたしにカマをかけたの。


気分?


それとも…。


「じゃあね、お姫様。元気にしててね」


気がつけば、手を振って出て行く南の姿があった。

「あんたに言われなくても元気しているわよ」


「えー!酷いーそんな憎まれ口叩かないで」


「いいから早くどこかに行って」


酷い酷いと言いながら出て行く南を階段から見送った。