帰国してからのあたしは随分とわがままになったらしい。
カツンカツンと、階段を上がる途中。
「そういえば、ここにもう1人お姫様がいるんだっけ」
脈絡もなくいきなりそう切り出した南に、自然と足が止まった。
「俺はあいつも嫌いだけどね」
「悠人はそういうと思った。ねえ、お姫様は?」
このタイミングで聞かれるなんて、夢にも思っていなかった。
だって、感情のままに動いたら間違えなく嫌いだと言ってしまいそうだったから。
だけど、今後のことを考えれば、それは仁の信用を無くすことになりかねない。
落ち着け、あたし。
今一番大切な人は言わずもがな仁だ。
だから、…だからあたしのいう事は……。



