「千夏(ちなつ)、自己紹介」

仁に促され、彼女はようやく名を名乗った。


「初めましてぇ、相模 千夏(さがみ ちなつ)でえすっ!仁の彼女やってます!よろしくねえ」

あれ、千夏…。

聞いたことが……?

そしてはっきりと、今この子、彼女って言った。

「違うだろ。お前を彼女にした覚えはねえよ」

「えー?じゃ、この際彼女にしちゃおうよー」

ケラケラと中身のない笑みで笑いかける、千夏の名乗った女の子。


「仁、どういうこと?」

謎は深まるばかり。

「…千夏、翔と一緒に下に降りててくれ」

その瞬間、翔と彼女の顔が同時に歪んだ。

「えー、やあだー。千夏はぁ、ずぅっと仁と一緒だもん」

「はいはい。なんでもいいから」

「彼女って認めてくれたらいいよー」

「翔、頼む」

「…はいはい。千夏、行くよ」

「むぅ…なんの話してたか教えてね!」

手を引かれ、渋々彼女は部屋を出て行く。


「あの子、年齢いくつ?」

「お前と同い年だよ。今年で17になる」

「ちょっと頭が痛くなりそう」

精神年齢が随分と低い雰囲気がある。

子供っぽい子はあたしの苦手な子だ。