「あれ、お姫様。早いね」



悠人と楽しそうに談笑していた南が、あたしを見て少し驚いたように声を高くした。


「…寝ていたから、起こさないように戻ってきたの」


「へえ、えらい。僕だったら寝込みでも襲っちゃうかな」


「冗談でも辞めなさいよ。女の子に嫌われるわよ」

いつになくしぼんだ声音であったのは、あたしでも分かった。

悠人と南が驚いたように顔を見合わせたのも、雰囲気で察した。


「…お姫様、言葉に覇気がないよ。なんかあったでしょ」


分かっている。


ここまで様子がおかしいなら、心配されるということも。


だけど、今のあたしは心配なんてして欲しくなかった。


「平気」


放っておいて。


「そっけないねえ」

だけどここにくるなら。


「なんでもいいでしょ。部屋戻るから。邪魔して悪かったわね」


それは仁がいいの。