「過去は過去。もうお姫様を敵だなんて思ってないよ」

にっこりと笑う南だが、あまり信用はしていない。

人間の感情には相変わらず疎いから、彼がどのようなこと想像しているのかなど分かるはずがないけど。

彼の危険な匂いは消えないものだ。


「それは信用出来ないわね」


「残念だなあ」


「まあいいわ。ところで貴方はなんの御用?」


「副総長サマに会いにきたんだ。もうBreakも終わりだから」


「…今、南は何を?」


「Breakは卒業したよ。だけど受け継いだ奴らが、問題起こしまくってて、まだ関わってるって感じかな」

「別に後輩のことなんだから気にしなくてもいいのに」

「やっぱりね、自分達と頑張ってきた仲間だから見捨てられないんだよね」

穏やかな笑みを浮かべている南。


その表情はよめない。

「綾とはその関係で?」

「そう!この街のナンバーワンは獅獣だしね。こういう案件は副総長サマの担当らしいんだあ。なのに、この感じだといなさそうだよねえ」


「生憎、綾はさっき買い物に出かけたわよ」


「うーん、すれ違いかあ。分かった。じゃあ待ってるよ。お姫様、話相手になって」


誰がここで待ってもよいと言ったのだろう。


「敵でもあった貴方がここにいると、勘違いする者が現れかねないわ。綾には伝えておくからまた今度にして」