それは、階段を下り、仁に会うためにあの部屋へと向かっていた途中だった。
「お姫様、おかえりなさい」
ふと、後ろから懐かしい声が聞こえた。
その人は、言ってしまえば会いたくなかった人物。
だけれど、再会はしてしまうもので。
仕方なしに、振り向いてしまう。
「久しぶり、オヒメサマ」
「…ひさびさね、南」
出会った当時はBreakの副総長だった男、南が来客用の椅子に腰掛けていた。
「あまり嬉しくなさそうだね」
「ええ、貴方とはあまりいい思い出がないものですから」
南と初めて出会ったのは、街中だった。
突っかかってきた南をあたしの得意な距離の取り方で離すと興味を持たれた。
こんなにニコニコと子供のような笑みを浮かべているけれど、実はあたしの家に入ろうとした強者で。
侮れないと感じているのはきっとあたしだけじゃない。