「……はい」
若干涙声だったかもしれない。
だけど、嗚咽が出るのを我慢しただけ偉いのではないか。
「今いいか?」
聞こえた優しい声は。
「そこでなら」
「…わかった。和佳菜、みんなで出かけるって話が出てるけど、行くか?」
仁のものじゃなかった。
「…行かない」
「分かった。俺と翔と千夏は行ってくるから、なんかあったら仁か悠人に声かけろよ」
あ、したの奴らでもいいけど、と言った綾にあたしは驚いて声を掛けた。
「仁は、行かないの?」
そうしたら、若干の間の後。
「行かねえよ。お前がここにいるだろうと思って行かねんだって。てかお前、いつから仁ばっかになったんだ?」
クスクスと笑い声も聞こえてきてなんだか顔が赤くなる。
「うるさい!」
「はいはい。じゃな、ゆっくり休めよ」
そうして綾の足音が遠ざかっていく。