誰、と聞きたいのはこちらの方である。

ああ、綾のタイミングというのはこのことなのか。

今更のように理解した。


「あたし、水島 和佳菜。貴女は?」

というなり彼女は手をパンと叩いて、わかった!といった。

「仁の元カノさんだ!」


はあ?

なんで質問と違うことを返されなくちゃいけないの。

頭が悪いの?

あたしが聞いてるのは、貴女の名前であって、貴女の思考を聞いているんじゃない。

第一それは間違っている。

「あたし、彼女だったわけでもないの。誰から聞いたの?」

「んんー?秘密ー!」

だめだ、この子とは話が噛み合わない。

本当に駆け引きができなくなっているのかもしれない。

だけど、それだけではないと思う。

あたしはこの人がもともと苦手だから、余計に話せないんだ。


ああ、イライラする。