「……そしたら琢磨さん、もう1年はお前らに会ってねえってことだよな」
綾の言葉に頷く。
「そうよ。全く、連絡くらい欲しいものよ」
そうだよな、と言いつつ、どこか考え込んでいる仁。
唇に手を当て、じっと一点を見つめている。
「…仁?」
「…あ、ああ。どうした」
「どうしたって聞きたいのはこちらよ。ぼうっとしているわ。考え事?」
「まあ、そんなところだ。それでお前は?俺らは名目上行ってることになってるけど、どうすんだよ」
あ、話をそらした。
この一年であたしは随分と察するのが上手になったと思う。
触れないようにゆっくりと、次の言葉を考える。
「…復学しろと?」
「だってお前の親御さん望みは “ 普通の生活を過ごしてもらいたい ” だろ?」
「そうだけど。あたし、言ったかしら?」
「ママさんから聞いた」
知らない間にママと仁が仲良くなっている。
ママはここにはいないのに。
なんだか少しママが羨ましくて、なんだか少し寂しくなった。