トイレに閉じこもると、余計に心拍数が上がるのが分かる。



「…なんだ、これ」


分からない。


心の中が色々な色で塗りたくられたように、自分の気持ちに整理がつかない。


「ほんと、おかしいなあ」


お手洗いに本当に行きたかったわけではない。


あの場から逃げたかっただけだなんて、あたしはそれくらいはわかっている。


戯れ合う2人が羨ましかったのも。


同時にとても嫌だったことも。



だけど視線が交わった時。



仁の視線に入ることができたことで、心の波がそっと穏やかになったのは……。




なぜ?