「いや、ほんと、悪かったって」
「あたしがどれだけ怖い思いをしたか分かっていっているの?」
「ほんと、ごめ…」
「ねえ…っ!」
「ごめん、和佳菜」
あたしがこんな怒っているのにもキチンとした理由がある。
あの後、しばらく仁はぐったりして目を覚さなくて、その隙に警察があの男を逮捕したのだけど。
「俺がちゃんと崩れ落ちないと安心しないんだって、警察の人に言われてたの。ほら、防弾チョッキ着てたし」
「それを知らないあたしが見たら、怖い思いをするって気がつかないの?馬鹿タレ」
あたしとサナダがいるホテルに来る前に警察と仁達は連絡を取り合っていたようで。
あそこにいるメンバー全員が防弾チョッキを着用していて。
頭とかには気をつけて、必ず逮捕に貢献させるという条件の下、遠隔で悠人が指定するタイミングまで突撃しないことを約束してもらっていたらしい。
「和佳菜を撃つことが目的だったから絶対身体に撃ってくると思ったの」
「もし頭に撃ってきたらどうするつもりだったの!」
「それは、避けるって」
「弾を見てから避けるのは物理的に不可能よ」
「…ほんとにごめん、和佳菜」
今は軽く、異常がないかの問診が終わった帰りで、個室に通されたあたしは終始怒っていた。
「泣かせるつもりじゃなかったんだ」
「…っこんなの、泣くわよ。馬鹿」
座ったまま隣でワンワン泣くあたしをそっと抱きしめてくれた。
「もう二度としないで」
「うん、しない」
「絶対に」
「約束するわよね?」
「するよ、だから」
__________泣かないで。