彼が目を見開いて、止まった。
「…お前は」
「あたしの特技は駆け引き。上手くいかなかったことがあったかしら?」
ふふんと、仁に笑ってみせる。
「……ねえな」
「でしょう?だから、貴方はきちんと前を向いて、貴方の姿勢を貫いて」
時折、仁はとても弱くなる。
彼の脆さも、その中にある優しさも、あたしは彼の良いところだと思う。
だから、あたしは応援し続ける。
彼女と仲良くなれるかはわからないけれど。
仁が前を向けるなら。
いつだって貴方の力になる。
「ありがとう…和佳菜」
「頼るのはお互い様よ」
ケラリと笑って。
「さあ、そろそろお姫様のところへ行きますか」
無事買い終えたと見られる彼女のところへ、2人そろって歩き始めた。